Google for Mobile - Game Bootcamp に参加した

概要

先日サンフランシスコで行われた Game Developers Conference というイベント内容のプレゼンテーションや Google製品を通してゲームビジネスを発展させるノウハウを聞けるイベント。

プログラム

基調講演・ライトニングトーク

Googleスタッフによる基調講演とLT。

ブレイクアウトセッション

セッションAはゲストによるパネルディスカッションやプレゼンテーション、 セッションBはGoogleスタッフによる Google Cloud Platform に関する説明。

参加して思ったこと

そのうち個人でゲームアプリ作ろうかなーと思ってるので参加してきた。

YoutubeGoogle Play みたいな、個人でも使うプラットフォームに関する知識は役立てられそうだし、 後半のセッションで実際にゲームを開発している人がセッションで語ってくれたこと、何を考えて作っているか、どうユーザーを盛り上げようとしているかというところはとても興味をひかれる内容だった。

Google の広告系の製品と関連付けたセッションのほうは企業で活かせそうなノウハウが多かったので個人的に生かすのは難しそう。それ以上に自分が趣味でゲームを作るとしたら広告を打って収益を得る目的で作ろうとは思っていないのであんまり共感できない点もあった。

レポート

基調講演

市場について

スマートフォンゲーム業界の盛り上がりについて触れていた。

いま一つのスマートフォンにインストールされているアプリの内平均22%がゲームアプリであること、 日本はデスクトップよりスマートフォンを見る率が高い国の上位10位以内に位置付けられていること、 日本のユーザーの半数はアプリ使用中に広告が挿入されていても平気であると回答したこと、 日本の e-commerce の内19%がアプリ内課金であること

上記の点から日本がゲームアプリ市場として盛り上がりを見せている理由として語られた。 日本国外の開発者たちはまず日本でブームを起こすためにどうすればいいかを考えなければいけないが、 日本人である我々にとっては国内のことを考えればいい立ち位置であるため、その有利さにも触れていた。

ケーススタディ

著名なゲームアプリメーカーがヒットするために行った施策について。

Google Play ではアプリ開発者が利用するためのアナリティクスや施策を打つための仕組みが整備されている。 アプリアイコン、スクリーンショットスクリーンショットの説明文、ビデオといった、 Google Play で表示される情報のほとんどがABテストできるように作られている(そのうち大きな影響を与えるとされている上位3つは アプリアイコン、スクリーンショットスクリーンショットの説明文 らしい)。

ある海外ゲームアプリはアイコンを変更したことで91.3%んインストール率を上昇させたり、 国内の例では、モンストが北米で売り出すためにアイコンやらプロモーションビデオやらを変えた例は有名だと思う。 アイコンとかについて → http://app.famitsu.com/20160405_689662/ 北米用のプロモビデオ → https://www.youtube.com/watch?v=XxQyVD2dJYs

Googleが提供するツール

ケーススタディで紹介した他にも、Google Play には色々なアナリティクスや施策の仕組みがある試してみてねって言ってた。

  • リテンション(起動頻度)
  • ファネルレポート(具体的な行動のトラッキング)
  • コホードグループ(インストール時期などによるセグメント)
  • ソースとシンク(ゲーム内リソースの消費量と獲得量)
  • Video録画機能(ゲームアプリプレイヤーが自分のプレイ動画をYoutubeに簡単に投稿できるようにする仕組みらしい)

これから利用できるツール

Android N

3Q(8月)に正式リリース予定。改善系の変更がたくさんある。 バッテリー消費量・パフォーマンス・安定性の改善など。

Notification Bundle / Customize が追加された。 一つのアプリからの多数の通知を一つにまとめたり、カスタムのビューを通知時に表示したりできる。

あとはNDKの改善や、後述するVulkanの対応がある。

Vulkan

Android N でハイエンドゲームを動作させるためのOpenGLとかに変わるエンジン(?)。 ローオーバーヘッドなグラフィックAPI

Android TV

アップデートが近々あるみたい。 ソニー製テレビで、Android TV を標準搭載しているものが出たりしてるので結構広めようとしてる感がある。 TVはリビングに置かれる特性上カジュアルな体験をさせられるし、一方でハイエンドゲームのプレイなど没入感の高い体験もつくれると考えているみたい。

VR

スマートフォンでVR映像を再生出来るカードボードとか作ってる。 オキュラスなどの他のVRデバイスと異なり、スマートフォン上で動作させるため誰にでも体験できる利点がある。 一方でその他のデバイスよりも性能が劣るため、VR酔いを避けるためのパフォーマンス改善やバッテリー消費を抑えるための改善を頑張ってるそう。

加えて、バイノーラル音源や立体音響といった手法でより没入感を高めるよう考えている。

ライトニングトーク

Googleスタッフによる、Google製品と絡めたお題の短いセッション

Google Cloud Platform

バックエンドはGoogleにお任せして、コンテンツに注力してほしい。

東京リージョンも今年半ばに開設するのでみんな使ってほしい。 beta登録はこの記事でもとりあげられている通り、ここから登録可能。

昨今話題のマシンラーニングも Vision API とか Speach API で試せる。

Android TV

従来のテレビで動作するゲームは開発コストがかかった。 しかしAndroidTV上で動作させればテレビで動作するゲームをスマートフォンアプリの開発の延長線上で開発できる。

カジュアルなゲームはもちろんだし、ハイエンドなゲームも動作させる技術を用意している。

Android TV と、スマートフォンと連携させることでそれぞれのデバイスに相応しい役割を与えられる。 Android TV でコンテンツを閲覧し、スマートフォンで検索や課金を行うなど。

ユーザーの心を掴むために

アプリの評価レートはユーザーの重要な判断軸のうちの一つ。評価を上げてもらうためにどうすればいいか。

レビュー欄にはいろいろな意見が寄せられるが、それに回答するのが一番良い方法。 Google Play の Developer Console に揃っている機能を活用してうまくリプライしましょう。 評価の国ごとの平均、レビューの検索機能、評価変動の可視化などができる。

レビューに回答することで、ロイヤルカスタマーを作ったり、誤解を解いたり、不具合について深く調査したりできる。 回答後、25%のユーザーがレートを上方修正してくれた結果があったらしい。

Youtubeコンテンツ戦略

ゲームに関するビデオの再生は多くがモバイルからのもの。 gaming.youtube.com というゲームコンテンツのビデオを集めたウェブサイトを用意した。

それとYoutuberとコラボしたい人向けのポイントについて。

  • 著作権の扱いを明確にする(音楽の二次利用など)
  • 動画の内容はYoutuberの色が出せるように固めすぎない
  • ステマにならないようにコラボであることを明記する
  • Youtuberに先行配信する
  • 動画撮影環境をアプリ側で提供する
  • アプリの世界観に沿ったYoutuberとコラボする

Youtuberになりたい人向けのポイントについて。

  • 定期的なアップロードを心がける。CMにはならないように
  • 360度動画や、ライブ配信などコンテンツにバリエーションを持たせる

ユーザーにリーチする3つのアプローチ / ユーザーを意識したアプリプロモーション

Google は5つの広告を表示できるプラットフォームを持っている。 Google検索、Google Play検索、アプリ利用中、Webサイト閲覧中、Youtube閲覧中。 Google AdMob を使うとそれらすべての広告表示の運用をまとめてくれて、自動的に最も有効になりそうなパフォーマンス調整をしてくれる。

潜在課金ユーザーやアクティブユーザーに広告を打ったり、体験プレイ広告でインストール前に試してもらったりして高LTVを実現する手助けができる。

TrueViewInStreamと呼ばれる、プロモーション動画終了後にインストールボタンを表示させる方法もある。

動画は効果的なプロモーションを実現できるし、ゲームをプレイする人は積極的に動画サイトを利用するというリサーチ結果もある。

動画を簡単に作るためのAutomatedVideoCreationも用意している。

休眠ユーザーを呼び戻すためには

ゲームアプリは定期的にインストールされる、入れ替わりの激しい分野 モンストは2013年のリリースから未だに人気であるのは、休眠ユーザーにいかに楽しんでもらえるかという点も重視していたから。 ユーザーを休眠日数とプレイヤーレベルでセグメントしてそれぞれに異なるメッセージを送ることでそれを実現した。 コンバージョンの計測分析体制を整え、ユーザーごとに異なったアプローチを取ることが重要。

動画クリエイティブの最適化

Googleに依頼するとブランドリスト、ブランドインタレストと呼ばれる調査をしてもらえる。 ユーザーが動画を見た後に動画の内容について検索したかどうかのトラッキングや、認知度の調査が可能。

Google Play Gamesの予測分析機能

ユーザーが離脱するであろうポイントを予測するための機能が備わっている。

アプリ内でのイベント(セッション開始、報酬獲得など)をインプットするとマシンラーニングのモデルを構築してくれる。そこからユーザーの離脱ポイントを予測してくれるサービス。 時間軸や端末種類、ユーザーの言語、他のゲームアプリのデータなども加味して予測を立てる。

ストア掲載情報の最適化

ユーザーは Google Play 上にある数少ない情報だけでそれをダウンロードするかどうかを決めている。 アプリアイコンやスクリーンショットを入れ替えるのは手軽かつ効果が出やすい方法なので試してみるといいよ。

ブレイクアウトセッション

Netmarble社のグローバル市場展開のケーススタディ

Netmarble社は韓国のゲームメーカー。 昔はPCゲームを開発していたが売り上げが不振で、2013年にモバイルゲームの開発に移行した。その後は Tencent から出資を受けたりできていい感じらしい。 韓国のゲームメーカーで有名なのがネクソンだけど、スマートフォン向けの売り上げを見ると Netmarble のほうが3倍も多い。

グローバル市場に展開するためにやったこと Global IP をうまく使うこととローカライゼーションが重要。

ディズニーとかMarvelとかを使って国外での認知度を高めた。 一つのアプリで全世界に売り出すという考えではなく、一つのアプリは韓国国内とアジア市場向けで、また別のアプリは北米とかヨーロッパ向け、みたいに分けて売り出しているそう。

ある程度売り出す国をターゲティングしているので、その国についてローカライゼーションに重点を置いている。 日本向けのゲームは、日本国内で有名な声優を当てたり、キャラクターのコスチュームを日本のアニメ型にしたり。

ゲーム内容についてもローカライゼーションしている。 日本向けのUIは多くのコンテンツに一画面からアクセスできるようにしている。日本のユーザーはそういったUIになれているし、端から端まで遊びたいユーザーが多い。フォントも日本ユーザーはこだわるので、他のアプリでもよく使われているフォントを選んだ。

イベントやゲームバランスさえも変更している。日本向けのゲームは幾つかのモードを用意して違った遊び方ができるようにしている。ストーリーを重視する傾向にあるので、ストーリー展開を見せることに重点を置く。

それと日本ユーザーはガチャ画面にこだわるらしい。なので日本向けにはよりガチャを引くことを楽しめるような構成にした。

動画を活用したモバイルゲームマーケティングの最前線

a Supercellの日本ゼネラルマネージャー b コロプラ白猫プロジェクトのプロデューサー c ガジェット通信副編集長,Youtuber d Youtubeコンテンツパートナーシップマネージャー によるパネルディスカッション

動画でどうマーケティングするか

[a] ユーザーであるゲームプレイヤーというコミュニティ自体が、動画を重要なツールの一つとして使っている現状があるので、どうサポートするかという点を考えている。

Supercellはクラッシュオブクランのイベントをフィンランドで行ったが、動画の同時接続数が12万人くらい最大で行った。スマホゲームのストリーミングでは最高クラスの接続数だった。 フィンランドで開催ということもあって、イベントを作る時に動画を意識して作った。規模を大きく見せるレイアウトとか考えた。

Supercellでは、グローバルで小さいチームで運営しているため、ビデオに開発者が出演することがない。 ゲームはSupercellが作って、ユーザーはそれをビデオで共有するという分担をしている。

[b] 一つのゲームに特化したメディアとして使っている。 予告編を見せることと、ゲーム開発者自身がビデオに出ることでのユーザーとのコミュニケーションツールとしての使い方をしている。

開発者自身がビデオに出演することで、ユーザーと会社の付き合いではなく、ユーザーと開発者という人と人との関係を築くことができる。広報が出演するよりも信頼感を与えられるし、自分自身もユーザーの声を聞けるので開発に力が入る。 ユーザーの不満を聞いたり体を張ったネタとかあったりで、後継者がいない大変さはある。

コアなユーザー向けにもWeb限定ビデオを用意したりしてアプローチしている。

ゲーム内外で熱量を高め、ゆくゆくはユーザーどうしで盛り上がれるコミュニティにするのを目指している。

[c] Youtuberとゲームメーカーで直接やりとりすると難しい点もあるので、その間に入ってコンテンツのアドバイスやノウハウの共有、Youtubeを運営するGoogleとのやりとりの窓口となってくれるMCNっていうやつがあるので利用してほしい。

動画クリエイターとの付き合い

a グローバルで展開しているので、英語圏のYoutuberが多い。それはそれとしてビジネスが成り立っている。 一方で日本でSupercellに関する動画を作っている人が少ないので対策を考えている。動画編集の仕方のワークショップとか。

ゲームのアップデート情報を先行して一部のYoutuberに渡しておいて、アップデートがあったらすぐに動画を作ってもらえるように声をかけたりしている。彼らはメディアとして確立しているので、発信された情報の広がりは重要視している。

b 動画を作る人それぞれに異なった層のファンがいる。ゲーム自体協力プレイを打ち出しているので、いろんな層のクリエイターやタレントとのコラボをしている。 違う楽しみ方をしたり、プレイヤーレベルの異なるユーザーをそれぞれ活性化させることができた。

c Youtuberはゲームメーカーをどう見ているか。

ゲーム実況者はゲームメーカーのことをもちろん好きだけど、畏れ多さみたいなのを感じてしまっている人もいる。 その他ジャンルの人は、ゲームに関するビデオが伸びていることを知っているので、そういうジャンルに関われるのはチャンスじゃないかと考えてくれる。

Ingress 拡張現実プラットフォームが描く未来

Ingressは現在地情報を利用してポータルと呼ばれる地点を陣取りするゲーム。

Ingressの開発をしたNiantic社は、Google社内で Niantic Labo として活動していたのがはしり。 創業者は Google Earth の生みの親なので、地理情報のスペシャリストが運営している。

Ingressはゲームに4つの原則を取り入れている。

  1. 世界が舞台であり、人が外に出ること
  2. 動いて遊ぶこと

創業者の子供も室内でゲームをしていることが多かった。そういう人たちに、もっと世界の美しさを体験してほしい。

  1. 新しい視点からものを見ること

Ingressのゲーム内で重要なポータルは、現実世界で価値があると認められたものである。自分の身近にそういったものがあることに気づける。

  1. 現実世界の友情を作ること

Ingressは生活圏の重なる人同士が一緒に遊ぶことが多いゲーム。つながりの輪を広げてほしい。

歩き回ることが必須なゲームなので、治安のいい日本は夜でもプレイしやすく、ユーザーのアクティブ率がダントツで高いらしい。

マネタイズは企業とのパートナーシップモデルが主で、ゲーム内課金はそんなにやっていない。 コンビニやATMの場所をIngressのゲーム内でも重要な点にして、ブランド認知度を高めている。

災害用自動販売機という、災害時には無料で飲料を取り出せる自動販売機もゲーム内でポータルになっており、 熊本のゲームプレイヤーはすぐにその場所を思い出すことができたという話もあった。

Nianticはリアルワールドゲームのプラットフォーマを目指している。次に出すゲームは Pokemon GO。 NianticはVRじゃなくてARにフォーカスしている。VRは画面に没頭させる体験を生むけど、ARは地球を楽しむお手伝いができると思っている。